ヴィンセントと書かれた空色のバケツのような鉢植え。たくさんの向日葵が挿さっている。まるでそのヴィンセントという鉢植えの中に金色の朝日が溢れ始めてそこから零れ落ちた光の塊一つ一つが大輪の向日葵の花になっているような。しかしこの向日葵たちはどうも落ち着かない。ちょうど目玉のような花芯をきょろきょろとみんなばらばらの方向へ向けて、それはまるで長過ぎる夢から目覚めたばかりの人間、自分自身が何者かさえも忘れてしまった人間がここは何処なのだろう、わたしは誰なのだろうと辺りを見回しているようにも見える。黄色い花びらをたてがみのように逆立て生き生きと希望に満ち溢れた向日葵もあるし中にはもう花びらを散らし今枯れようとする向日葵もある。ヴィンセントから分裂したヴィンセントたち。わたしの起源を探すわたしたち。ああ、眩暈がするようだ。自分の顔を確かめようと覗き込んだ鏡が万華鏡だったら。