2020-10-27から1日間の記事一覧

白丁花

明けの藤の空に 仄かと咲く白丁花 冷めた青い葉の座敷に 常夜の浮かれ女たちは 崩れたおしろいをなおし ああ風の波が寄せるごと 甘く苦しい夢の吐息が いまだ微睡む蜜蜂たちの 無垢ないのちを揺り起こす

根の喪失と他人の出現

私にとっての絶対的な他者、それは神である。私だけではない。人類、この地球宇宙に存在するありとあらゆる生物及び無機物にとっての他者、それが神である。しかし近代以降、西洋ではその神が死に、つまり絶対的な他者を喪失した。するとどうなっただろうか…

まぼろしの夕焼

灰の花びらを指間から撒いてあてもなくひとり靴も履かずに歩いた風のない野原の終わりは真っ黒な貌の林だった樹冠に色づく葉の群れが赤い火の粉を散らし悪い女たちを焼いていた恨みや苦悶や嘆願や膿んだ空が終わりを吸ってまた更に膿んでいった

咳払い

小さな蝶の羽ばたきが地球の裏で嵐を起こすあれは嘘なんですいつだって嵐の原因は深い井戸の底に棄てられたさみしい骸骨女の咳払いそのかなしい風なんです