純日記

高い枝から低い枝へと尾長の鳥が飛び降りる。後ろにはまた尾長がいてその後ろにも。黒い頭が黒い頭に続いて空色の長い尾を振り振りぽんぽんと飛び降りる。街ではだいぶ前に姿を見なくなったが彼らはここに居たようだ。功刀’(くぬぎ)と小楢(こなら)の樹の…

少しずつ雲の断片が集まってきて、暗く重く大きな雨雲が形作られていく。今夜はきっと一晩中雨が降るのだろう。でもまだ静かだ。窓から見える庭は絵のなかの庭のようにまるで時間が止まってしまっている。それでも時折、何処からか小鳥ー四十雀や鶫ーが夢と…

日記08/24『信じるもの』

「結局、君は何を信じているの?」幾度となく尋ねられた問い。私はその度に答えに窮する。そう問われるのと同時に私も頭の中で問い掛けている。「私は何を信じているのか?」でも答えは出ない。いや出ているのだ、明確に。私は何も信じていない。絶対の神も…

日記08/23『青い部屋』

中学生の頃、私の家族は団地の六階から白い壁の一軒家へと引っ越して、私は初めて自分だけの部屋というものを与えられた。畳三畳ぐらいのそのひどく狭い部屋の壁に私はペンキを塗って青一色にした。天井も同じように青く塗ったのだけれど、所々元の壁の白い…

日記08/20『太陽の祭壇』

赫々たる日光。今日も噎せ返るほど太陽を浴びた。道を歩けば何処でも陽に当たる。夏は木の陰にすらその版図を拡大していた。うなだれて俯き蒼白いビルの建物のなかへ、夏の外へと足早に避難していく人間たち。しかし私はというと止せば良いのに昼の休憩の時…

日記08/19『青について』

青、それは一体何だろう。 遠くから見ると青色で近付くと段々薄くなり手の平で掬うと透明だ。遠くから眺める透明の色、それが青だ。青色は距離。不可能との距離の色。青い薔薇は不可能を表す。見えないものが見える。近くからでは見えない。遠くからだと見え…

窓の外のひまわり

酷い憂鬱と倦怠に包まれている。憂鬱がみしみしと身体を圧迫する。一歩たりとも動けない。硬い床の上に横たわっている。蝉の声が遠くに聞こえる。また更にみしみと身体が圧迫される。衝動的に自分の身体を引き裂いてしまいそうだ。そうしたら何かが出ていく…

夏がやってきた日

朝目覚めると窓の外は既に熱気を孕んだ眩しい光に包まれていた。雀たちの鳴き声、近所の家から車が発進する音も聞こえる。まるでこれから友人たちと車で海へ出掛けて行くような爽やかさ。こんな夏の朝を待っていた。真っ白な牛乳を飲んで食パンを齧る。 じん…