小説論

中村光夫の文學論と三島由紀夫

芸術とは教育の敵であり、芸術家とは社会の敵である。私は幼い頃から私はその本質を無意識的に朦朧と感じ取ってはいた。しかしそれを明確な言葉として意識するようになったのは最近の事であって、中村光夫の文學論という本を読んでからの事である。 中村光夫…

ものを書くという事

早朝は小雨が降っていたが、陽が昇り切る頃には止んだ。しかしまた曇天から細かい雨が降り始めている。 昼前、私は灰色の高層ビルとビルの合い間にある小さな公園で昼食を食べていた。プラスチックな光沢を放つ人工の芝が敷き詰められ、そこに数か所冷たい石…

七月十二日の日記「小説家の自殺」

小説を書くという事は言うまでもなく唯一人の孤独な作業である。彼はたった一人で太陽を造り、星々の運行を設定して、地球を誕生させて、そこに木を植え草を植え、動物や昆虫を繁殖させ、人類を誕生させ、村を造り街を造り、そこに繁多な登場人物たちを置か…