戯れにひげ剃り用の白いムースをずっと無くなるまで出し続ける。ぷしゅぷしゅと時折掠れたガスの抜ける音を立てながらマシュマロ状の塊が既に積み重なり融合して異様な形を形成しているその集合体のもとへと静かに垂れ落ちる。蒼い蛍光灯の光の下、幾つもの白い丸みが瘤のように或いは腫瘍のように脈絡なく混沌と隆起しているその生命無き塊は石膏のように冷ややかでしかし軽く息を吹きかけるとふるふると嬉しそうに震え、軽く指の腹で触るとその表面は人体の最も柔らかい部分のような弾力を返してきてしかしその指にほんの少し力を加えるだけで指の先からずぶずぶと何ら抵抗なく中に指が入ってしまう。ああ、この奇妙な塊の一つ一つが乳房であり臀部であり豊満な腹部であり女の顔で、その瞳がこちらを見てきたら。ベルメールの人形の写真はそんないつかの戯れの塊、蛇口から溢れる水に押し流されてあっという間に排水溝の暗い穴へと消えていったあの無垢な塊を私に思い出させる。