永遠

天使の骸が転がる
蒼い草原の片隅で
崩れた石柱に凭れ
夢うつつと微睡む
わたしのまぶたを
シャボン玉の光が
やわらかに撫でる
山が見える地平線
見渡せるかぎりに
永遠がみちていた

わたしの靴の前の
赤詰草の花の上に
しじみ蝶がとまる
二対の小さな羽を
ゆっくりと開いて
ゆっくりと閉じて
まるで時間自体の
深い淵源のように
沈黙の海の底から
祈りの泡を静かに

するとまぶたの裏
夜の完全な暗黒が
仄々と明るみだし
暁の太陽がのぼる
風が息を吹き返し
金色に波打つ草原
陽に焼けた麦藁帽
揺れる青いリボン
満面の笑顔を零し
虫網を手に少年が
裸足で駆け始める
わたしの影を追い

ゆっくりと開いて
ゆっくりと閉じて
わたしは瞬きする
しじみ蝶は消えた
流れ始めた時間が
草原を鮮血に染め
冷たい風のなかで
わたしは見ていた
花に浮いた銀の露
蝶が産卵した永遠
夕闇に溶けていく
わたしの今刹那を