寒椿

轟々と鳴る北風が
乱暴に次のページを捲る
少しずつしかし急速に
薄れゆく景色
喪われていく言葉
木々は葉を落とされ
落ちた葉は干からびて
蝶たちの黒い棺を隠す
かつての王太陽も力尽き
今は真昼の月と化して
瞑想的な観念的な
白い光で世界を包むばかり
知らぬ間にしかし本当はずっと
私は冬の旅に出ていた
少しずつしかし急速に
露わになる青ざめたその死体
血という血を悉く抜かれて
その血を吸って乱れ咲く寒椿
あらゆる生命の息吹を拒否する
威嚇的な青い葉々で身を固め
彼女たちは待ち焦がれている
物語の終わる最後のページ
景色消えて言葉消えて
白鳥の群れが堕ちて砕け散り
世界が閃光の沈黙に包まれる
何にもないその最後のページを
花びらを紅い涙のように零して
寒椿たちは待っている