私は言葉を憎悪してきた。言葉を殺す現実をひたすら探し求めてきた。言葉は私の現実を小さく閉じ込める檻の様なものだった。私はまた現実に恐怖してきた。現実を殺す言葉をひたすら探し求めてきた。現実は無際限に拡がっていく厄災の箱だった。
 そうして言葉と現実、精神と肉体、太陽と海、光と闇、生と死の間を振り子の様に行き来する、それが私の人生の全てだった。いやしかし本当は言葉と現実が一つに溶け合う或る地点をいつも探し求めて来たに違いないのだ。